これは、年収200万円で、30代で1億円を貯めた実話を元にした小説です。
全8話:
1. 出会い -憧れの生活-
2. 教えられたこと -使うためではなく増やすために貯金する-
3. 貯金開始、お金を増やしていく秘訣
4. お金が貯まる人と貯まらない人の差
5. お金を貯めるという事-必需品を見直す-
6. 節約における勘違い-安物買いは節約にあらず-
7. 支出を減らした後は収入を増やすこと
8. ユンとの別れ-豊かな未来へ向けて-
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6. 節約における勘違い-安物買いは節約にあらず-
「雄一さんは、贅沢品を減らす、もしくは安いもので我慢することを節約だと言っているように思います。
それはもちろん間違いではありませんが、負債を減らして資産を増やさないと、いつまでたっても我慢を続けるだけになってしまいますよ。
雄一さんの資産と負債を今思いつく限り書き出してください。そして必需品には ○ をつけてください。」
「資産はこれだけです。服などの必需品は必要な物しか買ってません。小森さんのいう”贅沢品”ですね。
流行にもあまり興味はありませんので、服が破れた時に買いなおすぐらいです。交際費の飲み会なんかも、行く回数は減らして最近では月1回ぐらいです。」
「なるほど、贅沢品を減らすという意味では雄一さんも頑張っていると思います。本は…読書が趣味なのですか?」
「いいえ、ただ、自分への投資だと思っています。広い見識や人脈が大きな財産になると思って本は読むようにしています。」
「そうですか。」
小森はそこに異論はないと注釈を入れながらもこう続けた。
「まず今のタイミングいでは、本は買わなくてもいいと思います。自分への投資はもちろん重要ですが、投資するタイミングを間違っています。
株でも為替でも不動産でも、投資のタイミングを間違えると損しちゃいますよね。自分への投資も同じで、投資のタイミングを間違えると損をします。
例えば、大企業のビジネス術のような本を買って読むとします。
勉強にはなるかもしれませんが、グローバル企業のマーケティング術が中小企業に使えるでしょうか?これはお金と時間を失っていると言っていいでしょう。
もちろんグローバル企業への転職を考えている人なら話は別ですけどね…
投資のタイミングが正しいか間違っているかは、正直のところ誰にも断言はできません。しかし、私が話を聞く限り、雄一さんは、今は自分への投資をするべきタイミングではないと思います。」
雄一は “人脈作りは自分が有益な人間になってからでいい” と言ったユンの話とも通じるなと感じていた。
自分に投資をしても、活用できないならその時に投資する意味がないという事だろう。
「なるほど。確かに、今僕が大会社のマーケティング論の本を読んでも活用する術もないかもしれません。
実用的でない本を読んでいる自分自身が、理屈だけは立派な無価値な凡人だと感じることもあります。」
「その通りです。自分への投資をしたいのなら、必要な時にすればいい。
1億円すら持ったことがない人間に1000億の事を理解しろと言っても時間と労力の無駄です。
そういった知識を増やしても、むしろ今は邪魔になるだけだと思います。」
小森は少し間をおいてから続けた。
「あとは…家賃とスマホ代金、車、保険については、もっと真剣に考えた方がいいと思います。実家に帰れるなら帰った方が金銭的には楽になります。
スマホは本当に必要ですか?スマホは普通の携帯よりも何倍もコストがかかります。大きな負債です。
しかもスマホを持つ事で、ネットニュースを見たり、ゲームをしたり、何かと無駄な事に時間をとられてしまいます。」
「自宅が駅から遠いなら車は必要でしょう。
しかし駅から遠ければ基本的には家賃は駅前よりも安くすみます。
トータルのコストが最も安くなる状態を選ばなくてはなりません。
“なくてはならないもの” と “あれば便利なもの” をしっかり区別してください。
あと、ここで言う”コスト”という言葉は、厳密に金銭の事だけだと思ってください。」
「確かに時間もコストです。車があれば時間短縮につながる。これは時間コストが減ると言えますが、車を持つことで、よりお金は少なくなってしまいます。
便利になるかどうかではなく、お金が減らない、増えるということだけを考えて物事を判断するようにするのがポイントです。」
ここまで言われて雄一は圧倒されてしまった。
無駄遣いは限界まで減らしたつもりだったが、実家へ帰ることや、スマホを持たないこと、保険を解約することなど考えてもみなかったからだ。
なるほど、年収100万で1億を貯めるには、本当に徹底的にお金を使わないという事なんだろうと思った。
「わ、わかりました。考えてみます。
妻も僕も実家は遠方ですので実家に住むことはできません。
でも車は週に1回しか使わないので、売却を検討してみます。
保険も不要そうな部分は削って支払いを安くします。スマホも、必要な連絡は携帯とメールでも大丈夫なので、ガラケーのプランを検討してみます。」
小森は、ゆっくりとした声のトーンに戻って話を続けた。
「そうですか。ただし、1つ覚えておいてください。今私が言ったのは、“幸せになる方法” ではありません。 “お金を貯める方法” です。
子供がいるなら、子供の教育費を削ってまでお金を貯めたくない、という気持ちも十分理解できますし、両親との折り合いが悪く、実家に帰ってお金が貯まったとしても不幸な気分になってしまう。という人もいるかもしれません。
それに私も、何もかも削って全て貯金をすることが幸せだと言うつもりもありません。
さっきの話はあくまでも極端な例で、何が必要で何が不要なのかをしっかりと考えてくださいということです。
実家に住む人と、1人暮らしをする人では年間50万円~150万円ぐらいの差がつくという事だけ覚えておいてくださいね。」
「よく分かりました。ありがとうございます。」
「貯め始めが一番苦しいものです。
私は学生の時から貯金を始めていましたから、卒業してからは加速度的に増やすことができました。
お金は、いったん増え始めると、途中からはどんどん増えていきます。収入が多くないなら最初の10年を我慢するしか方法はありません。」
「なるほど。私の性格的にも一発逆転を狙うつもりはありませんので、危険を冒さずに1億円を目指したいと思っています。」
「それが懸命だと思います。例えば、独立して成功する人は10%ぐらい、その中のさらに10%ぐらいの人が大きく稼げると言われています。
全体からすると独立した人の1%ほどです。あまりにも確率が低い。
時間はかかりますが、確実に達成できる方法を選ぶ方ががいいと私も思います。」
「危険を冒さずに収入を増やすと言えば… 雄一さんは、夜や休日は何をしていますか?」
「休みの日ですか?いえ、特には…趣味で映画を見たり、妻と一緒に出かけたり。スマホで暇つぶしをしたり、普通だと思います。」
「そうですか。
まず、余暇の過ごし方を、消費ではなく生産するように切り替えてください。
例えば、ショッピングモールに出かけて特に必要ではないが何かを買う。ということをやめて、趣味の映画のことをブログに書いてみてはどうでしょうか?
スマホニュースを読むのを止めてスマホニュースを書く側になってください。スマホニュースアプリがなぜあれほどTVで広告宣伝されているのか分かりますか?儲かるからです。
読むだけじゃもったいない。自分で書いてみてください。
映画も、映画館には行かず、テレビでやっている映画を録画してみるようにしてください。
時間を潰すためにお金を消費する事が、最ももったいない行為ですから。」
「実はブログはあります。ほんの暇つぶしで書いているブログですけど。」
「ブログがあるなら、広告収入を得ることができますよ。休日や余暇にお金を使っていたことを、お金を貯めることに使えるなら、お金が減らないばかりか増えることになります。」
「なるほど、ブログで広告収入が得られるなんて知りませんでした!さっそくやってみようと思います。」
「そうですね。ブログに広告を掲載して、人が見に来れば収入になります。
映画のことを書いているなら、人が見に来てくれるような記事を週に1回でも月に2回でもいいので書いていってください。
最初は誰も見に来ないかもしれませんが、諦めずに頑張ってください。
貯金も収入も、我慢が大切ですよ。」
「私も本格的にお金を貯めだした時には妻と子供がおり、妻は働いていましたので子育てをメインにして、仕事は週2日の派遣社員しかできませんでした。でしたので年収は100万ほどでした。
空き時間を使ってちょっとずつネットでの収入を増やし、最終的には空き時間のネット副業だけで月10万円ちょっと、年150万円ほど稼げるようになっていました。」
小森の話は少し極端で偏ってはいたものの、一理あった。雄一は、自分に足りなかったものは、徹底さと我慢だと痛感した。