2024年8月5日、日経平均株価は1日で4,451円下がった。下げ幅としては、あのブラックマンデーを超えて過去最大だ。
その日の夕方、職場の後輩から「NISAで買った投資信託、全部売った方がいいですか」とLINEが来た。始めて半年。画面の評価額が真っ赤になって、夜も眠れないという。
私はこう返した。「今日は何もせんでええ。アプリも閉じて、晩ごはん食べて寝なさい」。
冷たいようだが、これが資産3億円まで来た私の、暴落の日の過ごし方のほぼすべてである。今回は、暴落の日に私がやったこと・やらなかったこと、そして慌てないための準備について書いてみる。
暴落は「来るかどうか」ではなく「いつ来るか」
年収200万円台の頃から投資を続けて、私は大きな暴落を何度も経験している。リーマンショックのときは、コツコツ積み上げた資産が1年ほどで目に見えて減った。コロナショックのときも、数週間で評価額が大きく削られた。
正直に言うと、最初の暴落のときは私も怖かった。毎晩のように証券口座を開いては、減った金額を給料の何か月分かと計算して、勝手に落ち込んでいた。そんなことしても1円も戻ってこないのに、である。
そこで分かったのは、暴落は事故ではなく「季節」みたいなものだということだ。夏が来れば暑いし、冬が来れば寒い。長く投資を続ければ、暴落は何度でもやってくる。ちなみに2024年の大暴落の翌日には、日経平均は過去最大の上げ幅で3,217円戻している。下がった日に売った人は、その戻りを丸ごと取り逃したことになる。
台風が来るたびに家を売る人はいない。窓を補強して、台風が過ぎるのを待つだけだ。投資も同じで、大事なのは暴落の日の判断ではなく、暴落が来る前の準備なのである。
暴落の日に私が「やらなかった」こと
まず、やらなかったことから書く。こちらの方が大事だからだ。
- 慌てて売らない。評価額が減っても、売らない限り損は確定しない。逆に、怖くなって売った瞬間に「含み損」は「本物の損」になる。
- 評価額を何度も見ない。1日に何回見ても株価は変わらない。見るたびに不安が増えるだけで、ろくな判断にならない。私は暴落中こそ、アプリを開く回数を減らした。
- 「底で全力で買う」ギャンブルをしない。暴落はチャンスだと言う人もいる。それは半分正しいが、どこが底かは誰にも分からない。生活費まで突っ込んで「ナンピン」するのは、投資ではなく賭けである。
- SNSの「〇〇暴落はまだ序章」系の情報を追わない。不安をあおる言葉ほどよく読まれる。読まれる情報と、自分に役立つ情報は別物だ。
要するに、暴落の日の私は「ほぼ何もしていない」。そんなん投資家として手抜きやん、と言われそうだが、何もしないで済むように、普段から準備しているのである。

暴落でも慌てないための「平時の準備」
では、私が普段から何を準備しているのか。特別なことは何もない。地味な3つだけだ。
1. 生活防衛資金を現金で持っておく
暴落で一番怖いのは、株価が下がったタイミングで生活費が必要になり、安値で売らざるを得なくなることだ。だから私は、生活費の数か月分以上を必ず現金で持っている。これがあるから、株価がいくら下がっても「今は売らなくていい」と言える。資産3億円になった今でも、このルールは変えていない。
2. 「下がっても眠れる割合」でしか株を持たない
私の資産は、国内株・外国株・債券・リート・現金に分けている。全部を株にすれば上がるときは大きいが、下がるときも大きい。自分が夜ぐっすり眠れる割合はどこか。それを決めるのは、教科書ではなく自分の胃袋である。暴落で眠れなくなったなら、それは「株の割合が多すぎる」というサインだと思っていい。
3. 積立は自動にして、暴落中も止めない
毎月の積立は、給料日の後に自動で買い付けるように設定している。株価が高いときは少ししか買えず、安いときはたくさん買える。暴落中に積立を止めるのは、スーパーの特売日に買い物をやめるようなものだ。
今の新しいNISAは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、生涯の非課税保有限度額が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)で、非課税で持てる期間は無期限になった(金融庁「NISAを知る」より)。期間が無期限ということは、暴落が来ても「期限までに売らなきゃ」と焦る必要がないということでもある。制度そのものが、長く持つ人に向いた形になっているのだ。
暴落は「自分の投資を見直す健康診断」
暴落を何度か経験して、私は暴落を「健康診断」だと思うようになった。
株価が下がったとき、自分がどう感じたか。怖くて眠れなかったのか、意外と平気だったのか。売りたくなったのか、買い増したくなったのか。それが、今の自分の投資が身の丈に合っているかどうかの答えである。
もし不安で仕方なかったなら、暴落が落ち着いてから、ゆっくり見直せばいい。現金を増やす、株の割合を少し下げる、積立額を無理のない金額にする。大事なのは「暴落の最中には決めない」こと。熱が出ているときに人生の大きな決断をしないのと同じだ。
オヤジ論になってしまうが、投資で一番お金を減らすのは、暴落そのものではなく、暴落に慌てた自分の行動だと思う。

まとめ
- 暴落は長く投資を続ければ必ず来る「季節」のようなもの。
- 暴落の日は、売らない・見すぎない・賭けない・あおり情報を追わない。
- 慌てないための準備は、生活防衛資金・眠れる配分・自動積立の3つ。
- 暴落は、自分の投資が身の丈に合っているかを知る健康診断。見直しは落ち着いてから。
あの日「全部売った方がいいですか」と聞いてきた後輩は、結局売らずに積立を続けている。半年ほどして「あのとき売らなくてよかったです」と笑っていた。
もちろん、どの資産をどれだけ持つかは、収入や家族構成、性格によって人それぞれだ。最後に決めるのは自分自身である。ただ、「暴落の日には何もしない」と今のうちに決めておくだけで、未来のお金は確実に守りやすくなる。始めるなら、暴落が来る前の今だ。











