これは、年収200万円で、30代で1億円を貯めた実話を元にした小説です。
全8話:
1. 出会い -憧れの生活-
2. 教えられたこと -使うためではなく増やすために貯金する-
3. 貯金開始、お金を増やしていく秘訣
4. お金が貯まる人と貯まらない人の差
5. お金を貯めるという事-必需品を見直す-
6. 節約における勘違い-安物買いは節約にあらず-
7. 支出を減らした後は収入を増やすこと
8. ユンとの別れ-豊かな未来へ向けて-
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2. 教えられたこと -使うためではなく増やすために貯金する-
あの花屋へ行った日から数日後、たまたま仕事が早く終わったので、雄一はふと思い出してまた花屋に寄ってみようと思い、駅を出てから家路とは反対方向に足を向けた。
「あれ?金曜日なのに定休日なのかな?」
店のシャッターが下りていたのだ。シャッター越しでもショーウィンドウのディスプレイが見えるような作りだったので、雄一は店の前まで行ってみることにした。
「うーん、やっぱり休みみたいだな。」
店の中の様子はいつもと変わらなかったが、明りも灯っておらず、誰もいなかった。雄一は特に気にすることもなく、その日はそのまま家へ帰ったのだった。
正直なところ、雄一は先日途中になってしまったユンさんの話の続きが気になっていた。
その日から、会社が早く終わった時には意識して駅前の花屋を覗くようにしていたのだが、何度か店の前まで行ってみたが、ずっと明かりもついていないままだった。
約10日ほど過ぎたころ、何度目かに店の前に行った時に気付いたのだが、切り花が1本も残っていないことに気がついた。
元々長期で店を閉めるつもりだったのかな?それとももしかして潰れたのか?などと考えていたが、ある日ようやくお店の中に人影があるのを見つけたのだ。
「こんにちは。ユンさん今日はオープンですか?ここのところ2週間ぐらいお店開いてなかったですよね。」
「ええ。ごめんなさいね。来てくれてたの?実はちょっとニュージーランドに遊びに行ってたのよ。」
「なるほど、旅行ですか。ニュージーランド、いいですね。今だと向こうは秋ですか?」
「そう。紅葉がとても良かったわ。」
雄一は内心、いったいいくら貯金があるんだ?と驚きながらも、顔には出さないように、今思い出したように話を切り出した。
「そう言えばユンさん、この間の話、普通のサラリーマンをしながら何か儲ける方法があるって…」
「ふふふ。儲け話だなんて、そんな難しい話じゃないのよ。」
ユンさんは本当に面白そうに笑いながら話を続けた。
「本当に単純よ。それはね…
ただお金を貯めるだけ。稼ぐ金額よりも少ない金額を生活費として使って、残りを貯めていくのよ。」
雄一は拍子の抜けたようなような声で聞きなおした。
「ええ!?それってただの節約じゃないですか。僕みたいな薄給じゃとても無理ですね。妻もパートで、助けてくれてますがそれでも生活費程度ですし…」
「でも、年収100万円で1億円貯めた人もいるわよ?その人、まだ30代だったと思うけど。」
「え!じゃあ年収200万ちょっとの俺でもできるかもしれない。老後を豊かに過ごすためには、1人2000万円必要だという話を新聞のコラムか何かで読んだ気がします。
確かに1億円あれば、好きな仕事をしながら、好きな時に旅行に行く生活はできるかもしれないですね。」
話の詳細を聞いてみると、本当に単純な事だった。収入と支出の差額を全部貯金していき、少しずつ投資に回すという話だ。
ポイントは、”物を買うためにお金を貯める”のではなく、”お金を増やすためにお金を貯める”ということだった。
それまで雄一は車を買うためや、結婚資金のためお金を貯めたりしていたが、お金を増やすためにお金を貯めたことはなかった。
「まあ騙されたと思ってやってみなさいよ。」
という最後の言葉を聞くより早く、雄一は決心していた。
『俺もお金を貯めて、40歳までに行きたい時に自由に旅行ができるようになってやる!』
興奮してしまっていた雄一が、ユンさんのお店で話だけして、何の花も買わずに意気揚々帰ってきてしまったことに気付いたのは、もう自宅についてからだった。