FIREしたら資産を何%ずつ使う?資産3億円の私が「取り崩し率」より大事にしていること

FIREの話をしていると、必ずと言っていいほど聞かれることがある。「で、資産は毎年何%ずつ使えばいいんですか?」というやつだ。

ネットを見れば「4%ルール」という言葉がすぐに出てくる。資産の4%ずつ取り崩していけば、30年くらいはお金が尽きにくい、というアメリカの研究から広まった目安だ。資産1億円なら年400万円、3億円なら年1,200万円。数字にすると、なんだか夢がある。

ただ、年収200万円台の会社員から、支出を削ってコツコツ積み立て、今の個人資産約3億円まで来た私の実感としては、「何%で取り崩すか」は、FIREで一番大事な話ではない。今日はそのあたりを、自分の考えとして書いてみたい。

貯める時期より、崩す時期のほうが難しい

オヤジ論になってしまうが、お金は貯めるより崩すほうがずっと難しい。

貯める時期は、やることがシンプルだ。収入から先に積み立てて、残りで暮らす。相場が下がっても、安く買えるだけだと思えばいい。ところが崩す時期は、相場が下がったときに「売らないと生活費が出ない」という場面がやってくる。下がったところで売れば、その分は二度と戻ってこない。同じ暴落でも、積み立て中の人と取り崩し中の人では、痛みがまるで違うのだ。

例えるなら、貯める時期は「水を溜めるバケツ」で、崩す時期は「穴の開いたバケツに、雨が降るのを待ちながら水を汲み出す」作業に近い。雨(運用益)が多い年もあれば、まったく降らない年もある。日照りの年にも同じ量を汲み出していたら、底が見えるのは早くなる。そんなん、考えたら当たり前やん。でも、FIREを目指している間は意外とこの「崩す側」のことを考えていない人が多い。

ちなみに、総務省統計局の家計調査(2025年平均)を見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、実収入(ほとんどが年金)が月254,395円、税金や社会保険料を引いた可処分所得が月221,544円に対して、消費支出は月263,979円だった。毎月およそ4万2千円が足りず、その分を貯蓄から崩している計算になる。FIREをしなくても、いずれは誰もが「崩す側」になる。だからこの話は、早期リタイアを目指す人だけのものではない。

私が「何%」より先に決めたこと

私が取り崩しを考えるときに、率より先に決めたことが3つある。

  • ①生活費の「床」と「天井」を分けておく
    家賃や食費、保険など、削れない支出を「床」、旅行や外食など相場が悪い年は我慢できる支出を「天井」として、別々に把握している。床の部分は、年金や配当・利息など、売らなくても入ってくるお金と現金でまかなえるようにしておく。天井の部分は、運用がうまくいった年だけ使う。
  • ②数年分の生活費は現金で持っておく
    相場が悪い年に株を売らなくて済むように、生活費の数年分は預金で置いてある。リターンはほぼゼロだが、これは「慌てて売らないための保険料」だと割り切っている。
  • ③毎年、同じ額を機械的に引き出さない
    4%ルールは「最初の年に決めた金額を、物価に合わせて毎年引き出す」という考え方で語られることが多い。でも私は、相場が良い年は少し多めに、悪い年は少なめにと、その年の状況を見て調整している。柔軟に使う額を変えられる人ほど、資産は長持ちしやすいと思う。

つまり、取り崩し率は「結果」であって、最初に決める「目標」ではない、というのが私の考えだ。

取り崩しは「床」と「天井」で考える図解

理想は「元本を崩さず、増えた分で暮らす」

このブログでは何度か書いてきたが、私の目標はずっと「1億円あれば、元本を崩さずに運用益で暮らせる」というところにあった。今もその考えは変わっていない。

元本を崩さないというのは、言い換えれば「取り崩し率を、運用で増える分より低く抑える」ということだ。増えた分の一部だけを使い、残りはまた資産に戻す。こうすると、物価が上がっても資産そのものが少しずつ大きくなっていくので、インフレにもある程度ついていける。逆に、増える分より多く使い続ければ、どれだけ大きな資産でもいつかは尽きる。3億円あっても、それは同じだ。

そしてもう一つ、見落としがちなのが税金だ。NISAの外で持っている株や投資信託を売って利益が出れば、その利益には約20%の税金がかかる。「4%取り崩す」と言っても、手元に残るのは4%より少ない。どの口座から、どの順番で崩すのかも、手取りを左右する大事なポイントになる。

自宅で家計を確認する年配の夫婦

「崩すのが怖い」も、それはそれで問題

ここまで「崩しすぎるな」という話をしてきたが、逆の失敗もある。お金を貯めることに慣れすぎて、FIREしても、定年しても、1円も崩せない人だ。

正直に書くと、私にもその傾向がある。資産が増えていくのを見るのが楽しくて、本来使ってもいい場面でも財布のひもを締めてしまう。家族から「それくらい使えばいいのに」と言われたことも一度や二度ではない。

でも、お金は使うために貯めるのではなく増やすために貯める、というのが私の軸だとしても、最後まで1円も使わずに終わるのは、それはそれでもったいない。自由な時間で世界を旅したい、という夢のために準備してきたのなら、ルールの範囲で気持ちよく使えばいい。取り崩しのルールを先に決めておくのは、使いすぎを防ぐためでもあり、同時に「ここまでは安心して使っていい」と自分に許可を出すためでもあるのだ。

まとめ

  • 4%ルールは目安としては便利だが、「何%で崩すか」より「どう崩すか」のほうが大事。
  • 削れない生活費(床)と、我慢できる支出(天井)を分けて考える。
  • 数年分の生活費を現金で持ち、相場が悪い年に売らなくて済むようにしておく。
  • 理想は、増えた分の範囲で暮らし、元本を崩さないこと。税金で手取りが減る点も忘れない。
  • 崩しすぎも、崩せなさすぎも、どちらも失敗。ルールは「安心して使う」ためにもある。

取り崩しのやり方に、全員に当てはまる正解はない。年金の見込み、家族構成、住まい、どれだけ働き続けるかによって、ちょうどいい形は人それぞれだ。具体的な配分や商品選びは、ぜひ自分の状況に合わせて自分で考えて決めてほしい。

FIREを目指している今のうちから、「貯め方」だけでなく「崩し方」まで一度イメージしておく。それだけで、いざその時が来たときの不安は、ずいぶん小さくなると思う。

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